
小学校低学年から人の視線が怖く、対人恐怖で引きこもり近い生活を送っていた20代のN.Kさん。「死にたい」「消えたい」とまで思い詰めていた彼女が、熊本カウンセリングでの1年間のサポートを通じて劇的な変化を遂げました。10点あった不安が2点にまで激減し、友達とカラオケや居酒屋を楽しめるようになるまでのステップ、そして前向きに自分の道を歩めるようになったカウンセリング体験談をご紹介します。
体験談の掲載の許可をいただいています。
人の視線が気になって、とにかく人が恐い

私は小学校低学年ぐらいからずっと友だちとうまく関われない状態が続いていました。
人の視線が気になって、とにかく人が恐いのです。
対人恐怖みたいになって、引きこもりに近いような生活をしていました。
普段の生活では、外出することに制限がかかっていました。
まず、人が多いところへ行くのは避けていました。
それ以外の場所へは出かけて行くけれども、凄く疲れていたのです。
また、何をしても楽しめず、緊張・不安が続いていました。
「死にたい」
「消えたい」
「みんな自分のことは必要としていない」
というネガティブな感情を持っていました。
いろんなトレーニングに取り組んだ

熊本カウンセリングへ初めて来るときは、それほど不安はありませんでした。
第一印象は、良さそうな感じでした。
熊本カウンセリングに通い出してから、いろんなことに取り組みました。
いろんな用事を作って自分で自分を忙しくして外出を多くしました。
苦手な場所に自分から行ってみて場数を踏んで慣れるトレーニングや、考え方をいいほうにとらえるトレーニングもしました。
精神科デイケアへ通ったり、ボランティアの団体に入って活動を始めたりもして、仲間を増やしています。
人ともっとコミュニケーションをして前向きで楽しい人生を送っていきたい

熊本カウンセリングへ初めて行ったときから約1年間が経った今、緊張・不安がずいぶん解消されました。
1年前の緊張・不安のレベルを10とすると、今は2ぐらいです。
友だちができて、一緒にボーリングやカラオケへ行ったり、お酒を飲みに行ったりもできるようになって、楽しいです。イキイキした感じになりました。
考え方も前向きになりました。
「他人は他人(ひとはひと)」
「いろんな人がいる」
「自分は独りぼっちではない」
「目的本位に生きればいい」
「自分がやりたいことを普通にしていればいい」
と思えるようになったのです。
また、友だちと話をするときの会話術が身に付いてきたと思います。
田中先生からは、「目的本位に生きる」「自分を忙しくする」等のアドバイスをしていただいたことがとても助かりました。
また、会話のスキルを教えてもらったこともありがたかったです。
今後、私は人ともっとコミュニケーションをして前向きで楽しい人生を送っていきたいと思っています。
1年前の私のような人にアドバイス
1年前の私のような状態で悩んでいる人に対しては、
「人に対して感謝の心を持つこと」
「いろんな人や物事を良い方向に捉えること」
「自分がやりたいことをやって、自分の道を歩んでいくこと」
をアドバイスしたいと思います。
(20代女性 N.Kさん)
心理カウンセラーからコメント

N.Kさんとは約1年間、カウンセリングを続けていますが、はじめの半年間は辛かったと思います。いろんなトレーニングを開始されていましたが、期待するほどの改善は見られず、逆に疲労困憊することのほうが多かったからです。
しかし、後半の半年間には良い変化がどんどん目に見えるようになりました。
「マクドナルドへ独りで行けるようになりました!今日もここへ来る前に寄ってきたのです。」
「友達数人と、下通から上通(※熊本市内の繁華街のことです)をしゃべりながら歩いてカラオケへ行けました!」
「数年ぶりでプリクラを撮りました!家族以外の人と撮ったのは初めてかも。」
「来月はみんなとボーリングへ行く予定です。」
「今日はこれから、熊本駅の本屋へ寄って帰ります。」
頬を紅潮させて話される姿に、私も喜びを感じることが多かったです!
心理療法家の視点から、N.Kさんが大きなパラダイムシフトを遂げられた理由を、専門的な観点から解説します。
「気分本位」から「目的本位」への転換
私がアドバイスした「目的本位に生きる」というのは、日本発の伝統的な精神療法である「森田療法」の核心です。
北西憲二、南一彦(1995)は、対人恐怖を抱える人が「不快な気分(人が怖いなど)を無くしてから行動しよう」とする悪循環を指摘しています。森田療法のアプローチにより、感情はコントロールできない自然現象として受け入れ、「目的本位(今の自分がやるべき行動に集中する)」に切り替えることで、結果的に社会復帰や対人関係の改善が大きく進むことを実証しています。
N.Kさんは、不安という感情は「そこにあるもの」として小脇に抱えつつ、「用事を作って外出する」「ボランティアに行く」という目的(行動)に焦点を当てて動き続けました。感情のコントロールを手放し、行動をコントロールしたことが、結果的に脳の恐怖システムを鎮める最大の近道となったと考えます。
「場数を踏む」行動活性化による成功体験の上書き
N.Kさんが取り組まれた「苦手な場所に自分から行く」という行動は、認知行動療法における「暴露(エクスポージャー)」や「行動活性化」と呼ばれる非常に強力なアプローチです。
人が怖いからと避けて引きこもっていると、脳は「やはり外は危険だ」と誤学習を強めてしまいます。N.Kさんは精神科デイケアやボランティアなど、少しずつ場数を踏むことで、「行ってみたら楽しかった」「仲間ができた」という安全な現実のデータを脳に上書きしていきました。この地道なトレーニングが、不安レベルを10から2にまで下げた強固な土台になったと考えます。
これに関しては、社交不安研究の世界的権威であるHeimberg, R. G. (2002)は、回避行動(人が多いところを避けること)を止め、段階的に苦手な環境に身を置く「暴露(エクスポージャー)と行動活性化」が、不安を下げるための有力な手段であると証明しています。
「他人は他人」という健全な心理的境界線の獲得
N.Kさんが至った「他人は他人、自分は自分のやりたいことを普通にしていればいい」という思考は、心理学でいう「心理的境界線(バウンダリー)」の確立を意味します。
Gilovich, T., Medvec, V. H., & Savitsky, K. (2000)は、人間(特に対人不安が強い人)は「他人は自分が思っているよりも、自分のことを見ていないし、気にも留めていない」という事実(スポットライト効果の錯覚)を実験で明らかにしました。
N.Kさんは1年間のカウンセリングを経て、脳にかかっていた過剰なスポットライトの呪縛(自他境界の曖昧さ)が外れ、健全な心理的境界線(バウンダリー)を獲得できたと考えます。
参考・出典URL
Kitanishi, K., & Minami, K. (1995). Morita therapy for social phobia (taijin kyofusho) in Japan. Psychiatric Quarterly, 66(3), 263–277.
Heimberg, R. G. (2002). Cognitive-behavioral therapy for social anxiety disorder: Current status and future directions. Biological Psychiatry, 51(1), 101–108.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11801235/
Gilovich, T., Medvec, V. H., & Savitsky, K. (2000). The spotlight effect in social judgment: An egocentric bias in estimates of the salience of one's own actions and appearance. Journal of Personality and Social Psychology, 78(2), 211–222.
https://psycnet.apa.org/record/2000-13328-002
この記事を書いた人
- 公認心理師。2007年に心理カウンセラー・心理セラピストとして独立し、熊本市に「熊本カウンセリング」を開設しました。以来17年以上にわたり、心理カウンセリングの実践に携わり、これまでに7,000件を超える相談実績を積み重ねてきました。2019年には拠点を熊本県八代郡氷川町に移し、地域に根ざした活動を展開しています。
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