
子どもの頃のいじめ体験が原因で、人との距離が怖くなり、他人と深く関わることを避けて生きてきたS.Hさん。そんな彼が「このままではいけない」と感じ、熊本カウンセリングに通う決意をしました。過去を癒すイメージ療法を通して心の壁を少しずつ越え、人とのつながりを楽しめるようになっていった心理カウンセリング体験談を紹介します。人間関係が怖い――そんな方への希望の物語です。
人が近づいてくるのが嫌だった
私は人に対してものすごく嫌悪感を感じていました。
人が私に親しみを感じて、近づいてくるのが嫌なのです。
1メートル以内に入られるととても嫌でした。
会社員をしていたときは、同僚と飲みに行ったり、社員旅行に行ったりするのが嫌でしたね。
飲みに行ったときは、最初はできるだけテーブル席の端に座り、しばらくしてカウンター席に座るようにしていました。できるだけ隣の席に人が座ってほしくないからです
そして、お酒をたくさん飲んで酔っ払ってごまかしていました。
集団の中での仕事が嫌だった
集団の中で仕事をすることも嫌でした。
一人で営業先を回る仕事をする方が好きでした。
営業先のお客様とはフランクなふりをして話をしていました。10分や20分ぐらいなら平気ですから。
しかしこれ以上は仲良くなりたくないという気持ちを持っていました。
女性との付き合いは別れる方向に持っていっていた
女性との付き合いではどうしても深い関係になってしまうのですが、ある程度以上の関係になると逃げていました。
会わなくしていったり、嫌いなふりをしたりして、別れる方向にもっていっていました。
転校先の小学校でいじめにあったのが原因

私がこのように人に対する嫌悪感、恐怖感を持つようになったのは小学5年生ごろからです。当時、転校先の小学校でいじめにあったのが原因です。
いろいろあって現実逃避をするようになりました。
「人間と付き合うのはほどほどにしよう」
「自然の景色だけを見て生きてきたい」
「一人で生きていきたい」
と思うようになりました。
当時は、遊ぶ友達はいないし、同級生とは会いたくなかったので、道路をぶらぶら歩いたり、山を歩いたりして時間をつぶしていた思い出があります。
人がたくさんいる場所にはできるだけいたくなかったのです。
自分の中にある壁を越えたかった

50代の半ばになって、自分がどのように生きていきたいのか考えたことがありました。
できればこれまでのような自分ではなく、他人と親しくつきあっていく自分になりたいと思いました。自分の中にある壁を越えたかったのです。
そしてそれを可能にしてくれる専門家と出会いたいと思ったのです。
そして検索したりして見つけたのが熊本カウンセリングでした。
6回のセッションの中では、過去に戻るようなイメージをしたセラピーが印象的です。
いじめられる体験を回避したり、みんなと野球して遊んだりするイメージを作ったことをよく覚えています。これらのイメージにはとても救われた気がします。
人づきあいが変わってきた!

最近では人づきあいが変わってきました。
これまでは嫌な人と出会うと、その人と話さずに少しずつ離れていっていました。
そういう行動をする自分も嫌でした。
今ではその嫌な人と近づくことができようになりました。これまでだったら嫌な気持ちばかり感じていましたが、その人との間にある問題をどのようにしたら解決できるか冷静に考えるようになりました。
私はテニススクールに通っていて、ときどきいろんな人とペアになって試合をします。
そのときは、勝つことばかり考えて、ペアになった相手とは「仕方なくあなたと組んでいるんだよ」という雰囲気を出していたと思います。そして早く試合を終わらせてペアを終わらせたいと思っていました。それは相手にも伝わっていたと思います。
ところが昨日は、若い人や年配の人など4組の人たちとペアになって試合をしたのですが、試合後にハイタッチをして喜び合えたのです。
そして生まれて初めてハイタッチをしました。
最高にうれしかったです。これまでの人生で味わったことのない感覚でした。
ハイタッチをして普通に会話ができてうれしかったです。
試合で勝つとか負けるということよりも、一緒に助け合いながらプレーするという素晴らしさを昨日初めて感じました。
これまで「勝てばいい」とだけ思っていましたから。
また私には女性のLINE友達がいます。
これまでこの人が私の自宅に来ることは嫌だったのですが、最近ではミカンを届けたりしてくれます。そのとき自然に感謝して受け取ることができています。
仲が少し深まりました。
他人と普通に対応できている自分がいるなと感じます。
熊本カウンセリングに来る前に他人に感じていた嫌悪感や恐怖感を10点とすると、今は1点か2点に下がりました。多いときで2点です。生活するには問題ないレベルです。
今後は地域の町おこしに参加したり、人生のパートナーを見つけて結婚したりしていきたいですね。
いじめ後遺症で対人恐怖に苦しんでいる人にアドバイス

私はこれまで迷路の中に入ってしまっていたと思うのです。
自分で迷路から出ることができないのに、あがき苦しんでいたのです。
私と同じように対人恐怖で悩んでいる人も同じように迷路に入ってしまっているのではないでしょうか。
そのような人には、上を見て誰かに助けを求めてほしいと思います。
迷路の中で自力で脱出できないのに無理して頑張っていると深みにはまってしまいます。
迷路の中でにっちもさっちもいかなくなると、10年でも20年でもあっという間に経ってしまいます。迷路の中では時間が止まったままなのです。自分の体験からそう思いますね。
迷路を上から見て、脱出法が分かる人に助けを求めるとよいと思います。
ただ、多くの人が脱出法が分からない人に助けを求めていると思います。例えば友達とか。
本当に分かる人に助けを求めて欲しいと思います。
(50代男性 S.Hさん)
心理カウンセラーからコメント

S.Hさんのお話、とても胸に響きます。長い年月をかけて抱えてこられた「人との距離への恐怖」や「近づかれることへの嫌悪感」は、まさに深い心の傷のあらわれです。小学校時代のいじめの体験が、心の奥に「人は自分を傷つける存在だ」という警戒心を刻みつけ、それが人間関係における根深い不安となっていたのだと思います。
このような体験をされた方は、自分でも気づかないうちに「人と関わらないことで心の安全を守る」という生き方のパターンを形成していきます。誰かと親しくなるとまた傷つくのではないかという恐れが働くため、無意識のうちに距離を取ったり、関係を終わらせてしまったりするのです。S.Hさんが「嫌いなふりをして別れる方向に持っていった」と語っておられるのは、その典型的な自己防衛反応です。
しかしS.Hさんは、その「壁」に真正面から向き合う決意をされました。50代という年齢で「自分を変えたい」「他人と親しくなれるようになりたい」と思われた勇気は、並大抵のものではありません。その一歩を踏み出すには、相当な覚悟とエネルギーが必要だったはずです。
熊本カウンセリングでのセッションの中で行った「過去に戻るイメージ療法」も、非常に意義深いものだったと思います。トラウマ治療では、単に過去を思い出すだけでなく、“安全な形で過去をやり直す”という体験を通じて、脳と心に新しい記憶を作り直すことが重要です。
いじめられた場面を回避したり、楽しく野球をしているイメージを作ることは、「あのときの自分にも、別の可能性があった」と心が実感するプロセスです。それによって、“人と関わる=危険”という思い込みが少しずつ緩み、「人と関わる=心地よい体験もある」と再学習されていきます。
その結果、S.Hさんの中で確実に変化が起こっています。
これまでは避けていた「人との接触」に少しずつ前向きに関われるようになり、テニススクールで初めてハイタッチを交わせた瞬間の喜びは、心の回復を象徴していますね。ハイタッチという小さな行為の中には、「人とつながる心地よさ」「共に喜びを分かち合う安心感」が凝縮されています。これは人間関係における“信頼の再構築”が始まった証拠です。
また、女性のLINE友達とのやり取りにも見られるように、「人の好意を素直に受け取る」という変化も起きています。人との関係の中で“感謝して受け取る”という行為は、心が安心を感じていなければできません。まさに「嫌悪感や恐怖が10点から1〜2点に下がった」という表現は、心の安全基地が再び形成されつつあることを示しています。
人間関係において大切なのは、“完璧に人付き合いが得意になる”ことではありません。
S.Hさんのように、「嫌だな」と感じる自分も認めながら、それでも一歩踏み出してみる。この繰り返しの中で、少しずつ心の壁がやわらぎ、人との関係が自然になっていきます。
S.Hさんが最後に語られた「迷路の中にいる」という比喩も非常に深い洞察です。
トラウマや対人恐怖は、まさに出口の見えない迷路のようなものです。どれだけ頑張っても、自分一人では抜け出せない感覚に苦しみます。そのときに“上から全体を見渡せる人=専門家”に助けを求めることは、決して弱さではなく、回復への最短ルートです。カウンセラーの役割は、その迷路の地図を一緒に広げ、少しずつ出口へ導いていくことにあります。
S.Hさんの体験は、「人とのつながりを取り戻す力は、何歳からでも育て直せる」という希望を与えてくれます。
いじめや対人恐怖で苦しむ方々にとって、S.Hさんの言葉は大きな励ましとなるでしょう。
これからも、他者との関わりの中で新しい自分を見つけ、より自由で穏やかな人生を歩まれていくことを、心から応援しています。
この記事を書いた人
- 公認心理師。2007年に心理カウンセラー・心理セラピストとして独立し、熊本市に「熊本カウンセリング」を開設しました。以来17年以上にわたり、心理カウンセリングの実践に携わり、これまでに7,000件を超える相談実績を積み重ねてきました。2019年には拠点を熊本県八代郡氷川町に移し、地域に根ざした活動を展開しています。
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