
「暑い車内」や「逃げられない空間」で激しい動悸や呼吸困難に襲われていた30代のK.Mさん。3年前から始まったパニック症状に悩み、一時は行動範囲も狭まっていました。しかし、夫の勧めで心理療法を受けたところ、わずか1回目でパニックが起きなくなり、6回目で長年の不安が「10点から0点」へ。夏の公園へ娘と出かけられるようになるまで、劇的な回復を遂げた感動のカウンセリング体験談をご紹介します。体験談掲載の許可をいただいています。
暑くて飲み物がないという状況がパニック発作のトリガーだった

私は車の中にいるときに、暑くて飲み物がないという状況になると、動悸がしてきてパニックになっていました。
「暑さ」と「飲み物がない」という2つがパニックになる条件だったと思います。
車の運転以外でも、「閉じ込められている」や「逃げられない」と感じる状況で「暑さ」も加わるとパニックになりやすかったですね。
例えば、洗車機で洗車しているときやまつ毛パーマの施術を受けているとき等です。
パニック症状が起き始めたのは3年前からです。
パニック症状が出ると息が吸えなくなって、「どうしよう、どうしよう」と不安が高まっていました。
パニック発作も不安も完全に消えた

熊本カウンセリングには夫が以前にお世話になっていて、夫から勧められて来ました。
夫から「心理療法を受けると記憶が真白になって思い出さなくなる」と聞いていました。
実際に心理療法を受けたらその通りになったので、「ああ、これか」と思いましたね。
1回目のセッションから不安は残っているけど、パニックにはならなくなりました。
それがびっくりしましたね。
6回のセッションが終わって、気持ちが前向きになった感じがします。不安にならなくなりました。以前はパニックに「なる、なる、なる」と思っていたのですが、今は「大丈夫、大丈夫、大丈夫」と思っています。
以前は動悸がしていましたが、全くなくなりました。
また以前は不安が10点満点で10点ぐらいありました。5回目のセッションまではそれが2点ぐらいに残っていました。「パニックになったらどうしよう」という不安が残っていたのです。
それも6回目のセッションで0点まで下がりました。完全に消えました。
パニック発作が解消できて行動範囲が広がった

夏に暑くても車でちょっと出かけようという気持ちになれて、行動範囲が広がりましたね。
娘をつれて公園に行けました。今までだったら暑いしパニックになるのが不安でそんな気持ちにはならなかったのですが…。気温は33度ありましたが、公園の木陰は涼しかったです。できることが増えた気がします。
また浴室のドアを閉めてシャワーをするのもできるようになりました。
以前は「閉じ込められている」感じがしてできなかったのですが…。
パニックをそのままにしていたら、精神の病気になっていたと思うので、早めに熊本カウンセリングに来て良かったと思います。
パニック発作に悩む人にアドバイス
私と同じようにパニックで悩んでい人には、その悩みを話せる人をみつけて話すとよいと思います。それで私は助けられたことがあります。
またいいなと思えるところには頼って行ったほうがいいと思いますね。
(30代女性 K.Mさん)
心理カウンセラーからコメント

K.Mさんが夏の暑さや車内という日常の空間でパニック発作の恐怖と戦い続け、それを見事に克服されたことを大変うれしく思います。
33度の猛暑の中、お嬢様と公園へ行けたというお話は、K.Mさんが「安心な日常」を取り戻された何よりの証拠です。
心理療法家の視点から、K.Mさんの症状のメカニズムと、なぜこれほど劇的に「不安が10点から0点」へと変化したのかを専門的に解説します。
脳が誤って学習した「パニックの方程式」
K.Mさんが仰る「暑さ」と「飲み物がない」という状況は、脳の生存システムが危険を誤認してしまった「条件づけ(Conditioning)」の典型例です。
Bouton, M. E., Mineka, S., & Barlow, D. H. (2001)は、一度激しいパニック発作を経験すると脳はその瞬間に存在していた「あらゆる刺激」をパニックの前兆(危険信号)として学習(条件づけ)するとし、これには2種類の手がかりがあると述べています。
●内受容条件づけ
発作が起きたときの体内の感覚(軽い動悸、呼吸の変化、めまい、暑さ、喉の渇きなど)が条件刺激となります。
●外受容条件づけ
発作が起きたときの外部の環境や文脈(車の中、エレベーター、洗車機、人混みなど)が条件刺激となります。
この理論は、K.Mさんが分析された「暑さと飲み物がないという2つが条件だった」という点と完全に一致しています。
「記憶が真っ白になる」心理療法
ご主人から聞いていた「記憶が真っ白になって思い出さなくなる」という現象。これは最先端の神経科学において、脳の「記憶の再凝固化(Memory Reconsolidation)」を利用した、非常に理にかなったアプローチです。
心理療法によって、脳に強固に刻まれていた「暑さ=恐怖」という過去の古い記憶のロックを安全に解除し、そこに「今はもう安全である」という新しいデータを上書きしました。これにより、恐怖の神経回路が物理的に遮断されたため、1回目のセッションから「パニック発作そのもの」が起きなくなるという劇的な変化が起きたのです。
Kindt, M., Soeter, M., & Vervliet, B. (2009)は、脳の「記憶の再凝固化(ロック解除と上書き)」の仕組みを使えば、一度刻まれた恐怖の感情記憶を「実質的に消去(Erasing)できる」ことを証明しました。
K.Mさんのセッションにおいても、心理療法によって、脳に強固に刻まれていた「暑さ=恐怖」という過去の古い記憶のロックを安全に解除し、そこに「今はもう安全である」という新しいデータを上書きしました。これにより、恐怖の神経回路が物理的に遮断されたため、1回目のセッションから「パニック発作そのもの」が起きなくなるという劇的な変化が起きたと考えます。
参考・出典URL
Bouton, M. E., Mineka, S., & Barlow, D. H. (2001). A modern learning theory perspective on the etiology of panic disorder. Psychological Review, 108(1), 4–32
https://psycnet.apa.org/doiLanding?doi=10.1037%2F0033-295X.108.1.4
Kindt, M., Soeter, M., & Vervliet, B. (2009). Beyond extinction: Erasing human fear responses and preventing the return of fear. Nature Neuroscience, 12(12), 1532–1534.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19219038/
この記事を書いた人
- 公認心理師。2007年に心理カウンセラー・心理セラピストとして独立し、熊本市に「熊本カウンセリング」を開設しました。以来17年以上にわたり、心理カウンセリングの実践に携わり、これまでに7,000件を超える相談実績を積み重ねてきました。2019年には拠点を熊本県八代郡氷川町に移し、地域に根ざした活動を展開しています。
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