
今年1月に結婚したばかりにもかかわらず、夫の過去の女性関係を問い詰めては、モノが壊れるほどの激しい夫婦喧嘩を月に3〜4回も繰り返していた30代のT.Mさん。離婚危機にまで瀕していた原因は、実は彼女自身が過去の恋愛で負った「浮気されたトラウマ」にありました。夫に勧められて行った熊本カウンセリングでの心理療法を経て、感情をコントロールし自分を俯瞰できるまでに変化を遂げた回復の軌跡をご紹介します。掲載の許可をいただいています。
夫婦喧嘩が多くてモノが壊れまくっていた

私は今年1月に結婚したのですが、結婚する前から夫婦喧嘩が多いことに悩んでいました。
喧嘩の原因は夫の過去の女性に関することです。
夫が過去にお付き合いしていた女性の写真やメールがスマホに残っていて、それを見つけました。押し入れから住民票も出てきました。
過去の女性の写真やメールを保存しているなんてデリカシーがない。
私は傷ついているのにその気持ちを分かってもらえない。
それで私はショックを受けて夫を問い詰めていました。
そうすると夫は「過去のことはどうでもいいのになんで今さら言ってくるのだ」と逆に怒られていました。
激しい喧嘩になって、夫は感情的になってテーブルを叩いたり、モノを投げつけてきました。
テレビのリモコンや掃除機が飛んできて私の体に当たったことがあります。
痛かったです。
買ったばかりの掃除機が壊れて、「なんでそんなことするんだろう」と思いました。
モノが壊れまくっていました。
そんな夫婦喧嘩を月に3回から4回していました。
険悪なムードになって離婚の話も出るぐらいでした。
親にも相談しました。
親は「モノを投げてくるような人とは離婚した方がいいかも」と言いました。
「あなたが言い過ぎるのもあるから許しなさい」とも言われていました。
夫婦喧嘩の原因は過去のトラウマ

そこまで激しい夫婦喧嘩をしてしまうのは、私にトラウマがあったからだと思います。
私は昔おつきあいした人から浮気されたことがあります。
遊び人に遊ばれたこともあります。
ちゃんとした男の人とつきあったことがありませんでした。
それで夫のことを「遊び人だったのかな」「昔つきあった男の人と同じなのかな」と思ってショックを感じて、責め立てていました。
夫のデリカシーの無さにいらついて、「この人と結婚してよかったのかな」「私の気持ちを分かってくれないなら、もう離婚しようかな」ということまで考えるようになっていました。
夫からカウンセリングに行ってほしいと言われた

ある日、夫から「こんなに喧嘩になるのはおまえが過去に囚われているからだ。カウンセリングに行ってほしい」と言われたのです。
それで「熊本 カウンセリング」とネットで検索して熊本カウンセリングを見つけました。場所も近かったのでこちらに来ました。
カウンセリングの中では、心理療法をしているときに昔のトラウマ場面をリアルに思い出して、忘れていた感情も思い出していたのが印象的でした。
夫の方もカウンセリングの内容に興味を持っているようでした。
カウンセリングで宿題が出ていたのですが、夫は「今日は宿題しましたか」「宿題は忘れずにちゃんとしてね」と言っていましたね。
夫婦喧嘩しなくなった。夫に変化も…

カウンセリングを受けて自分自身を俯瞰して見れるようになりました。
感情的に怒ることがなくなりました。
これまでは感情がコントロールできまずに思ったことをそのまま言っていました。
それを言ったら喧嘩になるなと今は分かるのですが、そのときは分からずにひたすら言っていたのです。
それが今は怒りそうになっても、「これを言ったらこうなるな」という未来まで想像して怒らなくなりました。
その結果、夫婦喧嘩しなくなりました。
月に0回です。
夫からは「落ち着いてきたね」と1回言われました。
母親からも「穏やかになったよね」と言われました。
夫婦喧嘩がなくなったお蔭で、モノが壊れなくなったのがいいですね。
また、夫婦喧嘩をするとエネルギーを使うので疲れていたのですが、そんな疲れがなくなりました。
夫も夫婦喧嘩がストレスだったようですが、それがなくなったようです。
夫の態度に変化がありました。
以前だったら怒って言ってくるような場面で、「どうしたの?」と穏やかに言ってくるようになりました。
今は離婚はしなくてよかったと思います。
夫婦喧嘩をしてしまう人にアドバイス
夫婦喧嘩をしてしまう人は心がいっぱいいっぱいで、夫婦喧嘩をしたくなくてもしてしまうと思います。
カウンセリングに行って話を聴いてもらって、トラウマを解消していくことで喧嘩がなくなるので、カウンセリングに行くのがお勧めです。
自分で治そうとするのも限界があるので。
(30代女性 T.Mさん)
心理カウンセラーからコメント

T.Mさんがモノが壊れるほどの激しい夫婦喧嘩や離婚の危機を乗り越え、現在は「月0回」の穏やかな生活を取り戻されたことを大変うれしく思います。
心理療法家の視点から、T.Mさんの身に起きていたことと、わずか数回のセッションでなぜこれほど劇的な関係修復が可能になったのか、専門的な観点から解説します。
過去のトラウマによる「現在の夫への投影」
なぜ夫のデリカシーのない行動(過去の写真の保管など)が、T.Mさんに対して離婚を考えるほどの猛烈な不信感や攻撃性を引き起こしてしまうのでしょうか?
それはT.Mさんの記憶の中に過去の交際相手から「浮気された」「遊ばれた」という未処理の強いトラウマが存在していたからです。
Thimm, J. C. (2010)の研究では、過去のトラウマから形成された「認知の歪みの核(スキーマ)」が、現在の対人関係やパートナーシップのトラブルに直結することを実証しています。
T.Mさんは過去の酷い失恋により「男は裏切るもの」「私はまた傷つけられる」というスキーマが過剰に発達していたため、夫の不用意な行動を「また遊ばれている」と脳が自動翻訳し、自分を守るために防衛的・攻撃的な問い詰めへと駆り立てられていたと考えます。
「感情のアクティングアウト」から「メタ認知(俯瞰)」への変化
以前のT.Mさんは、湧き上がった怒りをコントロールできず、思ったままを相手にぶつけていました。これは心理学で「アクティングアウト(感情の行動化)」と呼ばれ、喧嘩をエスカレートさせる最大の原因になります。
そのT.Mさんが、カウンセリング後に「これを言ったらどうなるか未来まで想像して怒らなくなった」のはなぜでしょうか。
Felmingham, K., Kemp, A., Williams, L., Das, P., Hughes, G., Peduto, V., & Bryant, R. (2007)の研究では、心理療法によって過去のトラウマ記憶が適切に処理されると、過剰に暴走していた「扁桃体(怒りや恐怖のアラーム)」の活動が有意に低下し、逆に自分を客観視して感情をコントロールする「前帯状回(ACC)や前頭葉」の機能が劇的に向上することが画像診断で証明されました。
T.Mさんが「感情に呑まれず自分を俯瞰して見れるようになった」「未来を想像して怒りを抑えられるようになった」というのは、単なる根性論ではなく、心理療法によって脳のブレーキシステムが正常に機能し始めたことを示していると考えます。
家族システム論が教える「一方が変われば全体が変わる」
なぜ妻一人がカウンセリングを受けただけなのに、夫の態度まで「どうしたの?」と穏やかに変化し、激しい夫婦喧嘩が月0回になったのでしょうか?
Christensen, A., & Heavey, C. L. (1990)の研究では、夫婦喧嘩における「一方が要求・非難(Demand)し、もう一方が拒絶・防衛(Withdraw/Defend)する」という悪循環のダイナミクスを解明しています。
以前はT.Mさんが過去のトラウマから激しく問い詰める(Demand)と、夫はコーナーに追い詰められて感情が爆発し、モノを投げる(Defend)という破壊的なシステムが完成していました。
それが心理療法によってT.Mさんが「問い詰めるステップ」を降りた(Demandの消失)ため、夫も防衛的に怒る必要性がなくなり、結果として「どうしたの?」と穏やかに対応するようになりました。
これは「家族システム論」が教える通りのことが現れたと考えます。
参考・出典URL
Thimm, J. C. (2010). Early maladaptive schemas and interpersonal problems. Personality and Individual Differences, 49(7), 750–755.
https://www.ijpsy.com/volumen13/num1/350/early-maladaptive-schemas-and-interpersonal-EN.pdf
Felmingham, K., Kemp, A., Williams, L., Das, P., Hughes, G., Peduto, V., & Bryant, R. (2007). Changes in anterior cingulate and amygdala activation after cognitive behavior therapy in PTSD. Biological Psychiatry, 62(11), 1290–1296.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17425531/
Christensen, A., & Heavey, C. L. (1990). Gender and social structure in the demand/withdraw pattern of marital conflict. Journal of Personality and Social Psychology, 59(1), 73–81.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/2213491/
この記事を書いた人
- 公認心理師。2007年に心理カウンセラー・心理セラピストとして独立し、熊本市に「熊本カウンセリング」を開設しました。以来17年以上にわたり、心理カウンセリングの実践に携わり、これまでに7,000件を超える相談実績を積み重ねてきました。2019年には拠点を熊本県八代郡氷川町に移し、地域に根ざした活動を展開しています。







