
「子供を怒りすぎてしまう」「手を挙げてしまう」……そんな自分に嫌気がさしていませんか?実はその怒りの裏には、あなた自身が親から受け継いだ「世間体」という名の呪縛が隠れているかもしれません。本記事では、カウンセリングを通じて自分の無意識に気づき、親子関係を劇的に変えた女性の体験談をご紹介します。険悪だった関係が、笑顔で語り合えるまでになった再生の軌跡は、育児に悩むすべての母親の光になるはずです。
体験談の掲載の許可をいただいています。
子供への過度な怒りの日々

私は子供に対して怒りすぎていました。
1回怒ると15分ぐらいはずっと感情的に叱り続けていました。手を挙げることもありました。
そのときは子供はずっと無表情になって黙っていました。
そうなったのは、子供が小学5、6年生になってから、周りの子と比較し始めて「他の子はできてるのになんでこの子はできてないんだろう」と私が思い始めてからです。
私があまりに怒りすぎるので、「子供が可哀想だ」と私の親からも、夫の親からも言われていました。
しかし私は「これでいいんだ」と思っていました。
その当時、仏教の本を読んだのです。その本に「子供は自立させることが大事である」と書いてあって、私は「自立させるためには怒ってでも良い習慣をつけないといけない」と考えて納得していたからです。
自分の子育てはこれでいいのかな?

それが5,6年前の話です。
その頃は普通に生活をしていたのですが、私は次第に体調が悪くなりました。
なんだか疲れるようになって、すごく寝るようになったのです。
子供を怒る、すごく疲れる、そして寝る、ようになったのです。そして外に出るのも恐い感じがして嫌になってきたのです。
最初は自分が疲れていることにも気づいていなかったのですが、「私は他の人とは違うな」「他の人はこんなに疲れていないんだ」ということに気づき始めました。
その頃、3番目の子供が保育園生で自閉症のグレーゾーンと言われました。私は自閉症の本を読んで、「これは子供よりも自分に当てはまっているな」と気づきました。それもあって私は「自分の子育てはこれでいいのかな?」と思い始めたのです。
ちょうどその頃、ラジオで加藤諦三さんの「テレフォン人生相談」を聞いたのです。そうしたら「わあ、私と同じような人がいっぱいいるぞ」と驚いたのです。
それから加藤諦三さんの本を読み始めたのです。
その本の中で加藤先生が「あなたはナルシシズムです」と言っている箇所があって、私もそうだと思ったのです。
私は自分のことがすごく嫌いなのに、自分を一番大事と思っているということはすでに気づいていました。それは仏教の本を読んで分かっていました。
子供を怒りすぎるのも、「子供のため」と思って怒っているけれど、本当は「子供がこんな行動をすると自分が悪く思われるのではないか」と自分が思っていることには気づいていました。
「子供のため」と言いながら本当は自分のためなんだとずっと思っていました。
でもどうすればよいのか分からないでいました。
ナルシシズムという言葉を知って、いろいろと調べてみました。
調べる中で「無意識に気づくことが大切です」「カウンセリングに行きなさい」ということが勧めてありました。
それで私はカウンセリングを受けることにして、熊本カウンセリングに来たのです。
カウンセリングで自分でも気づいていなかった過去を話した

カウンセリングを受けて一番印象的だったのは、やっぱり1回目のときですね。
自分の過去のことを尋ねられて、自分でも気づいていなかった過去を話したのが衝撃的でした。
私と同じように、私の親も世間体をすごく気にする人でした。
それで私に対して「カメなのにウサギになりなさい」のように言い続けていました。
それで私は劣等感がいっぱいあるようになりました。
そんな私が親になって、私も同じように子供に対して「違う人になりなさい」と言い続けてきました。子供の同級生に足が速かったり勉強ができる子を見て「ああいうふうになりなさい」言い続けてきました。
それを無意識に、意識せずにしていました。
そのことに気づきました。
それを意識してから楽になりました。
親子関係が変わってきた!

まず私が子供に感情的に叱るのがとても少なくなりました。
感情的に叱るのはまだ少しはあるのですが、次の日に私が「ごめんね、昨日は言い過ぎたね」と言うと、子供も「いや、僕も悪かった」と言ってくれて、二人で話し合えるようになりました。
話し合っていると子供から、
「あの言葉はお母さんがダメだったね~」
「あの言葉は子供がもともと持っているものをダメだって言っていたね」
と言われます。
私も、
「あの行動は今から変えていかないと、後から大変になるよ」
「でもあの言葉はお母さんのほうが悪かったと思う」
と返しています。
こんな話し合いをするようになったら、親子関係が変わってきたと思います。
以前は部活の送迎をするときには、子供は車の後部座席にしか乗りませんでした。助手席には絶対に乗らなかったのです。
それが今では助手席に乗るようになりました。
会話も増えました。
子供たちのほうから笑顔で話しかけてくるようになりましたね。
周りの目を気にしなくなった!

これまで私はPTAの集まりなど人が多く集まるところに行けてなかったわけではありませんが、楽に行けるようになりました。
これまでは周りの目をすごく気にしていました。
授業参観に行くと、自分の子供を見るよりも保護者の眼を見ているような感じでした。
保護者が数人集まって話をしていると「自分のことを言われているのではないか」と思ったり、他の保護者のささいな言動を見て「私は何か嫌われるようなことをしたかな?」と考えたりして、全部自分に結び付けて考えていました。
また授業中の子供を見ていると
「なんでうちの子はあんなことをしているんだろう?」
「なんで手を挙げて発表しないんだろう?」
と他の子と比較していました。
そんな状態が全くなくなりました。
授業参観に行っても、集中して自分の子供を観れています。
隣にいた保護者が話しかけてきても、その人とだけしっかり話せるようになりました。以前は同時に周りの人の声も気にしながら話していたので会話に集中できていませんでした。
部活の試合の応援に行っても、子供を観ることに集中できています。
以前は、席にただただ座って、緊張していただけでした。
「ここに座っていていいのかな? 」
「他の保護者が移動したら私も行ったほうがいいのかな?」
のようなことばかり考えていました。
子供を観ていても
「なんでうちの子はあんなことをしているのだろう?」
と子供のダメなところばかり観ている感じでした。
それが
「あの子はあの子なりに頑張っているな~」
と認められるようになりましたね。
(40代女性 M.Tさん)
心理カウンセラーからコメント

この体験談において、心理学的に極めて重要なポイントは、ご自身の中にある「世代間連鎖」に気づかれた点です。
世代間連鎖とは、親から子へ、そしてその孫へと、特定の思考パターン、行動様式、あるいはトラウマや養育態度が、世代を超えて受け継がれていく現象です。
M.Tさんは幼少期、親御さんから「カメなのにウサギになりなさい」と言われ続けてきました。これは「ありのままのあなたでは価値がない」という、非常に強力な呪縛です。
その結果、M.Tさんの心には深い劣等感が刻まれました。その痛みを抱えたまま親になると、無意識のうちに「自分の価値を証明するために、子供を優れた存在に(ウサギに)しないといけない」という心理的メカニズムが働きます。これが、M.Tさんが気づかれた「ナルシシズム(自己愛)」の正体です。
子供を叱っているようでいて、実は「子供ができないこと」で自分の価値が下がるのを恐れ、自分の中の劣等感と戦っていたのですね。授業参観で子供ではなく周りの保護者の目を気にしていたというエピソードは、まさにその「評価への恐怖」を象徴しています。
カウンセリングを通じて、この「無意識」の領域を「意識化」できたことは、M.Tさんだけでなく、M.Tさんのお子様、そしてその先の世代にまで続く連鎖を断ち切る、非常に大きな転換点となりました。
現在、お子様が助手席に乗るようになったという変化は、非常に大きな意味を持ちます。
後部座席は「心理的な距離」や「警戒」の表れでもありますが、助手席は「対等な対話」の場です。お子様が自分から隣に座り、笑顔で話しかけてくるようになったのは、お母さんが自分をコントロールする存在ではなく、「一人の人間として、弱さも強さも共有できる安心な存在」になったと確信したからでしょう。
また、失敗したときに「昨日はごめんね」と謝り、お子様からも「僕も悪かった」と返ってくる関係性は、完璧な親子よりもずっと健全で強固です。親が非を認める姿を見せることは、子供に「間違えてもやり直せるんだ」という一生モノの安心感を与えます。
これからは、周りの誰かの基準ではなく、目の前で一生懸命生きているお子様の姿、そして何より「苦しみの中から自分を変える努力を惜しまなかった、M.Tさん自身の強さ」を、優しい眼差しで認めてあげてください。
カメはカメの歩みで、そのままで十分に尊く、素晴らしい存在なのです。その穏やかな日常を、どうか大切に育んでいってくださいね。
この記事を書いた人
- 公認心理師。2007年に心理カウンセラー・心理セラピストとして独立し、熊本市に「熊本カウンセリング」を開設しました。以来17年以上にわたり、心理カウンセリングの実践に携わり、これまでに7,000件を超える相談実績を積み重ねてきました。2019年には拠点を熊本県八代郡氷川町に移し、地域に根ざした活動を展開しています。
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