
「適応障害」と診断されて休職そして退職したクライアント様の体験談をご紹介します。退職した職場と上司に関するトラウマ記憶に苦しまれていましたが、10回のカウンセリングと心理療法を受けてそれはほとんど解消されました。掲載の許可をいただいています。
ある日体が動かなくなった

ある職場に10年ぐらい勤めていました。
次第に業務量が多くなったり、責任ある仕事を任せられたりして、毎日いっぱいいっぱいの状態で働いていました。
ある日上司に呼ばれて面談していたら、「仕事に対する責任感がない」と強く叱責されることがありました。
毎日必死に働いてきたのに、そんなふうに言われてとてもショックを受けました。
その翌日から体が動かなくなりました。1週間ぐらい起き上がることができなくなりました。
涙が止まらなくなりました。倦怠感、不安感、焦燥感もでてきました。
今思えば、休職する前から、休日に呼吸が苦しくなったり、きつくて動けなくなったりしていました。
心療内科に行くと「適応障害」と診断されました。
それで結局、休職することになりました。
休職してほとんど寝ていました

休職した当初は何もできない状態でした。ほとんど寝ていました。
テレビも全く見ない、スマホも触らない日々でした。
それが3ヵ月ぐらい続きました。
その後少しずつ体調が回復し、自宅近くのコンビニに行くようになりました。
毎日5分から10分のウォーキングも始めました。
見たいドラマも観るようになりました。
退職しても職場のトラウマに苦しんだ

休職して1年後に退職しました。
体調は良くなってきているのですが、職場の忙しさや上司を思い出すと気分が落ち込んで体調が悪くなっていました。
外出したとき、職場の同僚を偶然見かけたり会ったりすると逃げたくなっていました。
また職場の同僚との連絡用のLINEグループに入っていましたが、それを見ると職場のことをいろいろと思い出してしまいます。それがいやなのでLINEはアプリごと削除しました。
自宅近くに小さな会社があり、その会社の電話の音が聞こえてきます。それを聞くと気分が悪くなっていました。
退職前に毎日複数の電話を同時に対応していて、ぐちゃぐちゃになりながら仕事をしていたことを思い出すからです。
心理療法で職場のトラウマを解消

熊本カウンセリングは、以前に母がお世話になっていたので、母から紹介してもらって来ました。
カウンセリングを受けたことがなかったので、最初は何をされるのかと不安でした。しかし、先生とも話しやすくて落ち着いてこれる場所だと思いました。
10回のカウンセリングと心理療法を受けました。
心理療法で職場のいろいろなトラウマを解消してもらいました。
心理療法をしたら、電話の音に反応しなくなり、気持ちが軽くなりました。
他にも用事が多く書き込まれたスケジュール帳を見ると切迫感がこみあげてきて、気分が悪くなっていました。これも職場での忙しさを思い出してしまうからです。
これも心理療法をしたら、スケジュール帳を見ても反応しなくなり、それほど切迫感を感じないようになりました。ちょっと気楽になりました。
記憶の中にある職場の上司の顔はぼやけた感じになって、上司を思い出してもスッキリ感を感じるようになりました。
職場のことを思い出す回数も半分以下になりました。
職場のトラウマで苦しんでいる人にアドバイス
これまで誰にも相談できなかった人がいると思います。
そんな人はカウンセラーなどの専門家の人に話してみると良いと思います。
話すだけでも気持ちが楽になるので、まずは話してみてほしいです。
(30代女性 M.Wさん)
心理カウンセラーからコメント

M.Wさんの体験には、長年にわたる過重労働と人間関係のストレスが積み重なり、ついに心身が限界を迎えた過程がとてもリアルに描かれています。まず、10年間もの間、責任ある仕事を一生懸命に続けてこられたこと自体が、強い責任感と誠実さの証です。
「仕事に対する責任感がない」と叱責された瞬間に心が折れてしまったのは、まさにその誠実さの裏返しです。自分を懸命に支えてきた価値観を否定されたように感じたことで、深いショックを受けるのは当然のことです。
このような経緯で起きる「体が動かなくなる」「涙が止まらない」「呼吸が苦しい」といった症状は、典型的な心身の防御反応です。長期間にわたって蓄積してきたストレスが限界を超えると、脳が「これ以上働かせると危険だ」と判断して、強制的にブレーキをかけるのです。これは「怠け」や「弱さ」ではなく、心と体が必死に命を守ろうとする自然な反応です。
M.Wさんは、休職後の3か月間、何もできずに寝るだけの生活を送っていたと書かれています。多くの方が同じような経験をされます。実は「何もできない時期」は、心の回復に必要な時間でもあります。脳が過剰なストレス状態から回復するためには、まず「何もしない」ことが最初に必要なのです。
その後、少しずつ外に出て歩いたり、ドラマを観たりといった小さな行動を再開できるようになったのは、心のエネルギーが回復してきた証拠です。非常に自然な回復プロセスをたどっておられます。
しかし、退職後もなお職場の記憶に苦しむ状態が続いた点は、とても重要です。「トラウマ」と呼ばれるもので、心が過去の出来事に囚われ続けてしまう状態です。電話の音やスケジュール帳といった日常の刺激にまで体が反応してしまうのは、脳がまだ「危険は去っていない」と誤解しているためです。頭では「もう大丈夫」と理解していても、体と感情がそれを受け入れられないのです。
熊本カウンセリングでの心理療法では、まさにこの「トラウマ記憶」にアプローチしました。職場の音や上司の顔を思い出しても反応が弱まり、心身の反応が落ち着いたのは、記憶が「過去の出来事」として整理され、脳の中で安全な場所に収まったということです。
これは非常に大きな回復です。トラウマの治療では、ただ「話す」だけでなく、感情と身体感覚を統合し直すことが重要であり、まさにその過程を10回のセッションで行いました。
特に印象的なのは、M.Wさんが「上司の顔がぼやけた感じになって、思い出してもスッキリ感を感じるようになった」と語られている点です。これは心理療法がうまく進んだときにしばしば見られる変化で、心が過去の支配から自由になったサインです。かつて苦しめていた記憶が、もう自分を苦しめる力を失ったのです。
そして最後に書かれていた「専門家に話してみてほしい」というメッセージには、M.Wさんご自身の優しさと経験からくる実感が込められています。トラウマや適応障害に苦しんでいる人は、誰にも話せずにひとりで抱え込んでしまいがちです。しかし、安心できる場で安全に話すこと、そして適切な心理的支援を受けることが、回復の大きな第一歩となります。
この体験談は、同じように職場でのストレスやトラウマに苦しんでいる方にとって、大きな希望の光となるでしょう。カウンセリングは「過去を変える」ものではありませんが、「過去との関わり方を変える」ことができます。かつての職場の出来事が心の中で「終わったこと」になったとき、人はようやく新しい未来に向かって歩き出せるのです。
この記事を書いた人
- 公認心理師。2007年に心理カウンセラー・心理セラピストとして独立し、熊本市に「熊本カウンセリング」を開設しました。以来17年以上にわたり、心理カウンセリングの実践に携わり、これまでに7,000件を超える相談実績を積み重ねてきました。2019年には拠点を熊本県八代郡氷川町に移し、地域に根ざした活動を展開しています。
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