義父への恐怖心を克服

義父への恐怖心を克服されたクライアント様の心理カウンセリング体験談を紹介します。
掲載の許可をいただいています。

夫に激しい嫌悪感をもつ理由とは

夫に嫌悪感を感じている妻

夫が昨年の春に仕事を退職し、家に居ることが多くなりました。
それから、冷蔵庫の中を見て「賞味期限が切れている」とか、「電気をつけっぱなし」など言い始めたのです。

その頃から私は夫に対して激しい嫌悪感を抱くようになり、喧嘩することも多くなりました。
私が何か言うと、「なんやっ!」と強く言い返してきます。とても見下した言い方で、命令的でした。それが嫌で嫌で堪りませんでした。
最近では、夫が近くにいるだけで苦痛でした。近くでタバコを吸われるだけで嫌でした。

どうしてこんなに夫に嫌悪感を感じるのだろうかと考えてみました。
答えはすぐに分かりました。
それは、退職後の夫の姿が生前の義父に似ていたからです。

義父から縛り付けられた生活をしてきた

義父に食事の世話をする女性

実は私は来る日も来る日もお手伝いさんのように義父から縛り付けられた生活をしてきました。それは約20年間続きました。自宅近くに住む義父の介護を最優先にした生活でした。
朝、昼、晩の食事、その他の家事をすべてしてきました。義父の介護のために、子どもの運動会の応援に行くことができなかったこともあります。

はじめの10年はまだ良かったです。姑が生きていて、私の苦労を理解してくれていて、話し相手になってくれたからです。
姑が病気で亡くなった後の10年間はとてもきつかったです。義父に老人性認知症の症状も加わったからです。

夕方5時に私は夕食を作るために義父の家に入っていました。
その夕方5時になると地域に音楽が流れるのですが、その音楽を聞くと胃が痛くなっていました。そしてかなり気持ちを切り替えないと、義父の家に入ることができませんでした。

義父と一対一で接していると、「食事がまずい」「明日は○○へ行って△△を買って来い」とチクリチクリと言ってくるのです。口答えをすると倍になって返ってくるので、黙って従う毎日でした。

義父は介護の人が来ると元気になり、お客さんにはひょうきんな姿さえ見せていました。しかし、私に対しては見下して命令的だったのです。

認知症が進むと、家の中のものを盗んだとして、私を盗人扱いし、激しく責められたことがあります。手を振り上げられたこともあります。

男性の怒鳴り声に恐怖を感じるようになった

電話に出ていてる女性

私はノイローゼのようになりました。
義父は亡くなる前の約1年間入院しました。私は長男の嫁として入院中のお世話をするべきだったのですが、とうとう体が動かなくなり病院に行くことができないまま、義父は亡くなりました。

義父が亡くなってからも、私は苦しみ続けました。
まず、長男の嫁だったのに入院中の義父の世話をしなかったことで自分を責めていました。

また電話のベルが鳴っても、電話に出ることができませんでした。
義父は生前、私を電話で呼びつけていました。そのせいか、電話のベルが鳴ると胸が苦しくなり、恐怖を感じるようになっていました。そのため、電話が鳴ってもとらずに、居留守にしていました。

また男性の怒鳴り声を聞くと恐怖を感じていました。

夫への嫌悪感もそうですが、結局、義父を思い出させるものを見聞きすると、激しい嫌悪感と恐怖がよみがえっていたのです。
家にいても過去のことばかり思い出していました。義父にまつわるさまざまな光景が脳裏によみがえってくるのです。

娘がカウンセリングを勧めてくれた

娘と会話する母親

ある日、娘に自分の気持ちを少し話しました。すると娘が「お母さんはよく頑張ったね」と言ってくれたのです。すると、どっと過去のことが思い返されて、涙が出てきました。いろいろなことが噴出してきたのです。

しかし、娘にすべてを受け止めてもらうには、大きすぎる内容でした。
何でも言える友達が亡くなったので、今はもう誰にも言えない内容です。他の友達には言えない内容があるし、恥ずかしさもあります。私の実の親に言ったら悲しませるのではないかと心配です。姑には言えていたのですが、もう亡くなっていません。

すると娘が「お母さん、熊本カウンセリングに行ってみたら」と勧めてくれたのです。

実は娘は熊本カウンセリングの田中先生のところでお世話になっていました。私から見ても「何でこんなことで悩むのだろう」と思う娘でした。融通がきかないのです。

しかし、熊本カウンセリングに半年ぐらい通ううちに、私から見ても「何か違うな」と感じられるようになりました。不安ばかり口に出していたのが、明るくなりました。何か乗り越えたように見えました。
娘は私の言うことは聞かないけれど、田中先生の言うことは聞いていました。「変わり方を教えてもらっているのよね」「先生に救われた」と言っていました。

義父のことを思い出しても恐怖を感じなくなった!

笑顔の女性

それならということで、娘が私に代わって最初の予約を取ってくれて、それで熊本カウンセリングに来た次第です。

7回のカウンセリングを終えて、今は義父のことを思い出しても恐怖を感じなくなりました。それまでは心臓がドキドキしていたけれど、完全になくなりました。涙とともに洗い流されたような感じがします。

義父のことを思い出すことはあるのですが、「そんなことがあったな」で終わる。不思議な感じです。「なんであんなことできつい思いをしたのだろう」とすら思います。

以前はドカッと憂うつだったのですが、それがなくなりました。気持ちが軽くなりました。
娘も同じことを言っていました。

夫との関係が良くなった!

穏やかに会話する夫婦

また、夫との関係が良くなってきました。
以前は夫に対して、「なによ、あなたがそれを○○したんでしょ」というような言い方をしていました。反発するような感じです。若い頃は我慢することでやり過ごしていたのですが、年をとるにつれて我慢できなくなっていたのです。

しかし夫への嫌悪感がなくなることで心に余裕を持てるようになり、夫に対して一呼吸おけるようになりました。夫の話を最後まで聞くように努力するようになったのです。

すると夫も変わってきました。
夫は何か言えば、バッと言い返してくる人だったのです。しかし最近では夫もすぐには答えず、一呼吸をおいて返してくるようになったと感じます。それが不思議です。
娘も「お父さん、穏やかになった。話を聞いてくれるようになった。」と言っています。

カウンセリングでは愚痴が言えて、的確な答えも得られます

田中先生には娘ともどもお世話になりました。

私と同じようなことで悩んでいる人には、話を聞いてくれる専門の人で、自分と相性がよい人と知り合うとよいとアドバイスしたいです。

専門の人と話すのと、友達と話すのとは全然違います。
友達と話すのはやっぱり愚痴になります。そして愚痴で終わります。相手もそこまで真剣にはとらえません。また見栄もあるし、知られたくないこともあります。
また私は友達と話した後に自己嫌悪になることもあります。

専門の先生とのカウンセリングでは、愚痴が言えて、それプラス的確な答えが得られます。安心だし、心が軽くなります。

(60代女性 R.Mさん)

心理カウンセラーからコメント

心理カウンセラー

R.Mさんの体験談を拝見する、長い年月をかけて蓄積された苦しみや恐怖が、現在のご主人との関係にまで影響を及ぼしていたことがよく伝わってきます。まずは「本当によく耐えてこられましたね」と心からお伝えしたいです。

義父様との生活は、単なる介護や同居といった枠を超えて、命令や支配を伴う強いストレス環境だったのだと思います。その中で「夕方5時の音楽を聞くだけで胃が痛くなる」というエピソードは、いかに心が追い詰められていたかを物語っています。

義父様からの命令口調や怒鳴り声、さらには不当な疑いをかけられたことが、恐怖や無力感を深く心に刻み込んでしまった。その記憶が、ご主人の退職後の言動や態度と重なって、「夫そのものが義父の姿に見えてしまう」という心理反応を引き起こしていたのだと思います。これは心の自然な防御反応であり、トラウマが日常の中で繰り返しよみがえる「フラッシュバック」に近い現象です。

このような状況では、夫婦の間にある「今の問題」だけではなく、「過去の体験が影響している構造」を理解することがとても大切です。ご主人の言葉や態度に対して、過剰に強い嫌悪感や恐怖を感じてしまうのは、決してR.Mさんの性格や努力不足のせいではなく、心に刻まれたトラウマが作り出す反応なのです。

カウンセリングを通じて、その恐怖や嫌悪感が「涙とともに洗い流された」と表現されているのは、とても象徴的です。安全な場で、自分の感情を受け止めてもらい、過去の体験を安心して語り直すことができ、トラウマ解消の心理療法を受けられたからこそ、心に余裕が戻り、「夫が近くにいること自体が苦痛」という感覚から解放されていったのだと思います。その結果、ご主人に対しても「一呼吸おけるようになった」という変化は、まさに心の回復の証です。

夫婦関係においては、「相手を変えようとする」よりも、「自分の心の反応を整える」ことが先決になるケースが多くあります。今回のように、R.Mさんが心の負担を軽くできたことで、ご主人の態度までもが穏やかになっていったのは象徴的です。夫婦は鏡のような存在で、片方の変化がもう一方に伝わり、関係性そのものが変わっていきます。「夫が変わったのは、妻である自分の変化が影響しているのだ」と実感されたことは、大きな自信につながるはずです。

R.Mさんが「心が軽くなった」と表現されたように、すでにご自身の中には回復の力が芽生えています。この変化を大切にしながら、今後はご夫婦の時間をより安心で温かなものにしていけると思います。

この記事を書いた人

心理カウンセラー 田中耕一郎
公認心理師。2007年に心理カウンセラー・心理セラピストとして独立し、熊本市に「熊本カウンセリング」を開設しました。以来17年以上にわたり、心理カウンセリングの実践に携わり、これまでに7,000件を超える相談実績を積み重ねてきました。2019年には拠点を熊本県八代郡氷川町に移し、地域に根ざした活動を展開しています。

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