
元夫からのDVのトラウマによって、多くのものに強い恐怖を感じるようになっていたW.Nさんの心理カウンセリング体験談を紹介します。10回のカウンセリングと心理療法によってトラウマは解消され、それとともにさまざまな恐怖もなくなりました。
いろんなものに恐怖を感じていた

私はいろんなものに恐怖を感じていました。
人の顔色をいつもうかがっていたり、ドアがパタンと締まる音に恐怖を感じていました。
他にも、電話の音、チャイムの音、車が自宅の敷地に入ってくるときにタイヤが砂利をふむ音、などにとくに怖かったですね。
そんな音を聞くとすぐに動悸がして、そわそわしていました。
私は心療内科に6年前から通っていて、適応障害と診断を受けています。
そんな恐怖を感じると処方されたデパスという薬をすぐに飲んでいました。
以前に勤めていた職場では、そこの理事長にも恐怖を感じていました。
いつもその人に怯えていました。
その職場には理事長の秘書の女性がいたのですが、その人の顔色をいつもうかがっていて、怯えていました。
自宅にいてもその人から電話がかかってくるのではないかと不安でした。
現在の職場に移ってからも、恐怖を感じる女性がいるのです。
その人が以前の職場の秘書の女性と似ているのです。その人からワーッと強く言われたことがあって、それ以来その女性が近づいてくると怖くなっています。
その女性が怖くて、デパスを追加して飲み過ぎてオーバードーズになり、職場で酩酊状態になったこともあります。
ろれつが回らなくなり、何をしゃべっていたのか覚えていません。
また、毎朝職場に行くときは冷や汗が出てしようがありません。
出勤すると直前のシフトのスタッフから申し送りをたくさん受けるのですが、それが頭に入ってこないのです。パニックになっていました。
その状態が2~3時間つづいて、その後ようやくクールダウンするのです。
元夫からDVを受けていた

私がそんな状態になった原因は、結婚していた頃の元夫のDVや姑の暴言や束縛にあると思います。
当時、元夫はすぐにカーッとなって暴力をふるう人でした。
手首に刃物が当たって切ったり、上半身に乗ってこられて肋骨を4本折ったりしました。
次第に体の見えない箇所にグーでパンチされるようになり、頭はたんこぶだらけでしたし、服の下は痣だらけでした。
元夫は暴力を子供の前でもするようになりました。
当時私はその暴力の時間が過ぎ去るのをじっと耐えるだけでした。反論もせず、抵抗もしませんでした。毎回、じっとこらえているばかりでしたね。
そうやって暴力を繰り返されたせいか、基本的に男性に恐怖を感じるようになりました。
元夫に似た人や舅に似た人はとくに怖いです。
元夫は普段は優しそうなのですが、急に表情が変わって怒り出し、暴力をふるいました。
それが怖くて、人の表情の変化が気になるようになりました。
初対面の人でも、その人の表情を見ていると、
「あれ、この人すぐにキレる人じゃないかな?」
「この人、DVしていないかな?」
と思ったりします。フッと表情が変わる人にそう思ってしまいます。
職場の男性スタッフにもそんな人が数人います。その人たちには怖くなって話しかけられなくなったり、注意ができなくなったりしていました。
元夫は営業マンでした。外づらがとても良くて、それに騙されて結婚してしまったのですが、結婚後すぐに暴力をふるうようになりました。
ですから今でもスーツを着た営業マンの人に不信感があって警戒しています。
姑から人格否定されていた

姑は私の人格を否定することをみんなの前で言っていました。
私が泣いても泣いても、私を追い詰めて追い詰めて、言い続けていました。
私は子供を帝王切開で出産したのですが、それで姑から、
「あんたは下から産んでいないから、楽して産んでいるから、子供が可愛くないんだろ」
「あんたの親は●●だろ」
などとよく言われていました。
帝王切開は産んだ後が結構きついんですけどね…。
家を飛び出して、自殺未遂

ある日の朝、子供を小学校に送り出した後、また姑からワーッと人格否定されました。
そして姑は杖で私を叩きました。
姑は脳梗塞の後に半身不随になっていて杖をついていたのです。その杖で私をよく叩いていましたし、子供も躾と称して叩いていました。
そのとき、私は我慢の限界がきて、持っていた家の鍵を姑に投げつけて、家を飛び出したのです。
私は実家に戻ると実家に迷惑をかけると思って、荒尾市や玉名市の方に車で行き、ショッピングセンターの駐車場で車中泊しながら1週間ぐらいさまよっていました。ここまで来れば追いかけてこれないだろうと思っていました。
私は「死ぬしかない」と考えていました。
最後に実家の父と姑に宛てて遺書を書きました。それをポストに投函しました。
車中泊をしている車の中で大量の睡眠薬と酒を飲みました。
とても気持ちが良く、これで解放されると思いました。
このときの感覚が忘れられず、実はこの20年以上、熊本カウンセリングに来るまでは、死にたい気持ちがずっと続いていました。
意識がなくなりながら、私は実家に電話をかけたようなのです。
私は記憶がないのですが…。
実家の両親や祖母は1週間行方不明になっている私を探し回っていたようです。
福岡にいた弟も帰ってきて探していたようです。
私が朦朧とした状態で電話をかけてきて、家族は大声で私を呼びながら、駐車していた場所を尋ね、私はそれに答えたようなのです。
場所が分かって、急いで助けに来てくれたようです。
翌日、目が覚めたとき、私は実家にいました。
病院にも運ばれていたようです。
その出来事があって、両親は激怒し、私を嫁ぎ先に絶対に帰さないと決めました。
元夫と姑は私を連れて帰ろうとして実家に何度も押しかけてきました。
両親が私を守ってくれましたが、ずっと怖い思いをしていました。
この押しかけてこられたときの記憶が、電話の音、チャイムの音、車が自宅の敷地に入ってくるときにタイヤが砂利をふむ音などに対する恐怖心につながっていると思います。
元夫と姑があまりに頻繁に押しかけてくるので、日中は近くの蜜柑山にある小屋に隠れたり、ドライブをずっとしていたりしていました。
そんな生活が離婚が成立するまでの約1年間続きました。
死にたい気持ちが続いていた

離婚後、私は就職して仕事をするようになりました。
結婚していた頃と比べるとずいぶん楽になりました。
でも、「まだ薬を飲んで忘れたい」「死にたい」という気持ちがずっと続いていました。
どう考えても今は幸せのはずなのに、そちらの方に気持ちが逃げてしまうような状態でした。
仕事を始めて最初の頃は良かったのですが、主任などになって責任が重くなってくるにつれて、恐怖を感じる人との接触も増えてきて、デパスや漢方薬を飲んで恐怖から逃げるようになりました。
デパスをオーバードーズして、職場で酩酊状態になった後、職場の同僚で精神科に勤務経験のある看護師の人が心配して、ネットで検索して熊本カウンセリングに行くのを勧めてくれたのです。
「それなら行こうかな」と熊本カウンセリングに申込しました。
恐怖が消えて、動悸もしなくなった

カウンセリングに来るようなって、死にたいという気持ちがなくなりました。
デパスをまったく飲まなくなり、動悸もしなくなりました。
また睡眠薬を飲まずによく眠れるようになりました。
夜中に一度も起きないのです。
以前は夜中に何度も目を覚ましていました。
よく悪夢を見ていて、動悸がして目を覚ましていたのです。
目が覚めて自分の心臓のドキドキドキという音を聞いていました。そのたびにデパスを飲んでいました。
母親からは「よく寝るね~。ずっといびきかいてるよ」と言われています。確かによく寝ているのです。睡眠薬もデパスも飲まずによく寝ています。これまで経験がないくらいに寝ています。
目覚めた後はとても気持ちがよいですね。もうなんでもできるくらいの気持ちです。
また毎朝仕事に手がつかない状態になっていたのが、冷静になって取り掛かりが早くなりました。頭がクリアになってきたのです。
ドアがパタンと閉まる音を聞いても怖くなくなりました。動悸がしなくなりました。以前はそれだけで口から心臓が飛び出るぐらいにバクバクしていたのですが。
今は少しビクッとするくらいです。
車が自宅の敷地に入ってくるときにタイヤが砂利をふむ音も今はもうまったく気にならないですね。
職場の恐怖を感じていた女性についても、顔が見れるようになりました。
以前はZoomで会議をするときにその女性がいると、画面を小さくしてその女性の顔が映らないようにしていましたが、今はもう顔を見れています。恐怖は出てこないです。
最近は職場の看護師から、「前とは全然違いますね。顔の表情や声の感じが違いますね」と言われています。
恐怖に苦しんでいる人にアドバイス
これまで私は「自分は心が弱いから恐怖を感じているのだ」と思ってきました。
しかし、田中先生から「似たような人に恐怖を感じていませんか」と質問されたことがあったのですが、そのときようやく自分の中にトラウマがあって、その反応として恐怖を感じていることに気付いたのです。
恐怖の原因が分かってストーンと腑に落ちた感じがしました。
私に似たような人たちは、自分にトラウマがあることに気づいてもいない人が多いのではないかと思います。
原因であるトラウマに気づいて、それを解消するといいよと言ってあげたいですね。
私の息子たちも私と同じ場面にいて、同じ経験をしたわけですから、機会があればカウンセリングを勧めてみたいなと思います。
「気づいていないかもしれないけれど、そんなトラウマが残っているかもしれないよ」と教えてあげたいです。
(50代女性 W.Nさん)
心理カウンセラーからコメント

W.Nさんが今日まで生き抜いてこられたこと、その一歩一歩がどれほど大きな勇気と努力の積み重ねだったかを想像し、心から敬意を抱きます。
トラウマは、命の危機を感じるような出来事や、長期間にわたる心理的虐待・身体的暴力などによって、脳と心に深い傷を残します。そしてその傷は、音や匂い、視覚的な刺激、人の表情や雰囲気といった「当時の状況を連想させるもの」によって、まるで現在進行形のように再体験されることがあります。
W.Nさんの体験談の中に出てきた、「ドアの音」「砂利を踏む音」「電話やチャイムの音」などへの過敏な反応は、まさにその再体験(フラッシュバック)によるものと考えられます。こうした反応はW.Nさんが「心が弱い」からでは決してなく、むしろ「生き延びるための防衛反応」として脳が過去の記憶を繰り返し呼び起こしていたのです。
このような恐怖反応を和らげていくには、単なる「気の持ちよう」では対処が難しく、トラウマに特化した心理的アプローチがとても重要です。
今回、デパスなどの薬から離れることができ、恐怖反応が激減し、眠れるようになり、朝の仕事にも取り組めるようになったという事実は、脳と心が「癒しの段階」に入ったことを示しています。これは一朝一夕では得られない、深く本質的な変化です。
どうかこれからも、W.Nさんご自身の歩みを誇りに思ってください。
トラウマは過去に起きたことですが、それにどう向き合うかは「今」選ぶことができます。
そして何よりも、W.Nさんはひとりではありません。
過去に傷つけられた分だけ、これからは安心できる人たちとつながりながら、「自分らしく生きる人生」を築いていけることを、心から願っております。
心理カウンセリングを受けたい人はいませんか?
心理カウンセリングは、過去の否定的な感情を解放し、深い癒しと、良い気づきをもたらし、新しい行動を促してくれます。
悩みを解消して、あなたの心は成長することができます。