
職場でおかしなことが起き始めた

それは20代後半の頃でした。私は高校卒業してある会社に勤めていました。
当時、私は社内の人間関係が良好で楽しく過ごしていました。会社の中にはいろいろな人がいて、いろんな社会勉強をさせてもらいました。今思えば、いい思い出がある会社でしたね。
そんな状態だったのですが、急におかしなことが起き始めました。
いろんな人が私に怒って言ってくるようになったのです。「あなたとは友達でもなんでもないから!」等と言われるのです。
また逆に、私のことをほめてくれる人もいるのです。
当時の私は異動して新しい部署にいたのですが、異動前の部署から電話がかかってくるのです。
他にも、私が休みの日に実家に帰省していると、夜中にいたずら電話がかかってきたり、会社の駐車場にとめていた私の車のタイヤがパンクさせられたりすることも起きていました。
私は何もしていないので何のことかさっぱり分かりません。
なんでこんな嫌がらせをされるのかなと思っていました。
異動前の部署では、陰口や噂で私に関する悪い評判がつくられているようでした。
どうやら私と親しくしていたA先輩が動き回っているようでした。
しかしはっきりとは分からないので、恐怖を感じていました。
退職して、人間不信になった

そんな状況が約1年半続いた頃、会社が希望退職の募集を始めました。私はそれに応じて退職しました。
私はおかしな職場環境から離れたいという気持ちがありましたし、もともと地元に帰るつもりでしたので、いい機会だと本当に思って帰りましたね。
退職後も職場で起きたおかしな出来事の数々を思い出していました。それがいつも頭の中でグルグルと回っているような感じで、いつも頭の横にある感じでした。心が重くて、薄いベールがかかったような感じで、冷たい感じでした。
そんな状態が20年以上続くことになりました。こんなに長い間悩んでいたなんて自分でもおかしいと思います。
私は他人を信用しなくなりました。他人のことを「斜めから」見るよう感じになりました。
夫からも「人が変わった」と言われました。
自分でも自分が変わったことが分かります。昔はこんなではなかったと思っています。
地元に帰った後に保育士の資格をとって保育園で働き始めたのですが、先輩の先生から仕事上のアドバイスされてもそれを素直に受け取れずに、仕事の改善はせずに自己嫌悪感だけが頭の中をグルグル回っているのです。
私がいつも暗い表情で仕事をしているので、ペアになっていた先輩の先生から叱られたこともあります。
私は昔からB'zのファンなのですが、大好きなB'zのCDも聴けなくなっていました。
友達とも連絡をとらなくなり、疎遠になっていきました。
そして私は体調を次第に崩していき、一番悪いときは寝てばかりの休養生活が1年近く続きましたが、心の中ではずっと退職した会社でのおかしな出来事やA先輩のことばかり考えていました。
退職後に元同僚たちから当時の状況について少しずつ話を聞いたのですが、まとめると、A先輩が私に関する悪いデマを流していたようです。それを信じた人たちが私に文句を言ってきたようです。
私と同じようにA先輩から標的された同僚が他にも数人いたようで、最終的にはA先輩は社内のみんなから総スカンをくらっていったとのこと。
A先輩が陰湿なことをする理由

なぜA先輩は仲の良かった私に対して、陰でそのような陰湿なことをしたのか?
それがようやくわかってきました。私のことが羨ましかったのだと思います。
私は当時社内の人間関係がとてもよくて、後輩から悩みごとの相談を受けたりしていました。同僚から好かれていました。そんな私の姿を見て、羨ましく思ったのでしょう。
私の仲の良かった同僚がその会社を退職して、心療内科の医療事務の仕事に転職しました。
その心療内科のお昼休みの時間に、昼食をとりながら私に起きた一連のおかしな出来事とA先輩の話を医師の先生に話したそうです。
するとその先生から「そのA先輩はおそらく自己愛性パーソナリティ障害の可能性があるから、その人とはすぐに離れたほうがいい」とアドバイスされたと伝えてくれました。
それを聞いて、私は自己愛性パーソナリティ障害について本を読んだりして勉強したのですが、A先輩の言動がたしかに当てはまることが多く、そう考えるとおかしな出来事の説明がつき、腑に落ちました。
このままではいけない

長い間休養していたある日、B'zのCDを聴いてみたら久しぶりに聴くことができました。
「B'zがやっと聴けるようになった、これまできつかったな」と涙がビャーと出ましたね。
それから少しずつ、「このままではいけない、こんな自分ではいけない、これが一生続くのは嫌だ、子供と関わる仕事をしているのにこんなじゃいかん」とつくづく思いました。
トラウマを思い出さなくなった

その頃、保育園で仲良くしていた先生からカウンセリングを受けるのを勧められていて、それで熊本カウンセリングにカウンセリングを申込したのです。
熊本カウンセリングでは心理療法を受けて、3週間後ぐらいには、A先輩に関するトラウマを思い出さないようになってきました。
それと同時に気持ちが軽くなった感じがしました。
最近では、心が温かくなってきて、色に例えるとオレンジ色とか黄色になったような感じがします。
夫からは「昔のことを言わなくなったね」と言われます。
職場では、同僚の先生から仕事上のアドバイスをしてもらったときに、以前は「またダメ出しされた」と悲観的にとらえていたのですが、最近は「提案してくれているのだからそれを受け入れていこう」と思えています。感情ではなくて理性で受け止めている感じです。
昨日はクラスの保護者に配るお便りを作っていました。
私は出来上がったお便りを「これでいい?」と同僚の先生に見せました。するとその先生は「よかった、よかった、それバッチリ」と言ってくれることがありました。
そんなふうに「これでいい?」と同僚に見せれる自分がいるのです。これまでの私はそんな軽い気持ちや、同僚を信頼して見せる気持ちがありませんでした。
「ああ、昔の健康な頃の自分に戻ってきたな」と思いましたね。
私と同じようなおかしな出来事が起きて悩んでいる人には、とにかく逃げたほうがいいと言ってあげたいですね。
そうしないといつの間にか心を壊されていきます。周りの人も巻き込まれて、困っていきます。
まずは第三者に相談したほうがいいですね。
(50代女性 M.Sさん)
心理カウンセラーからコメント

職場で突然起きた理不尽な攻撃、理由の分からない怒りや中傷、称賛と攻撃が同時に存在する不安定な環境。これは人の心を深く揺さぶり、現実感を奪う体験です。
「自分は何かしたのだろうか」「自分の感じていることは本当なのだろうか」
こうした疑念が積み重なる状態は、心理的には強いトラウマ体験にあたると考えます。
特にM.Sさんの場合、
・人間関係が良好だった職場
・信頼していた先輩
・理由が分からないまま続く嫌がらせ
という条件が重なっています。これは心にとって非常に過酷です。逃げ場がなく、説明もつかない状況は、脳と心を「警戒モード」に固定してしまいます。その結果、人を信じられなくなる、常に斜めから物事を見る、自己否定が止まらなくなる――これらは心が壊れたのではなく、必死に自分を守ろうとした結果なのです。
20年以上もその出来事が頭から離れなかったことを、「自分でもおかしい」とM.Sさんは書かれていますが、決してそうではありません。
未消化のトラウマは、時間が経っても自然には消えません。むしろ、心と体の不調、対人関係の困難、好きだったものを楽しめなくなる形で、静かに影響し続けます。B'zのCDが聴けなくなったこと、友人と距離ができたこと、体調を崩されたこと――それらはすべて、心が限界まで耐えていたサインです。
また、A先輩の言動について、後から情報がつながり、理解できたことは、M.Sさんにとって非常に大きな意味があります。「自分が悪かったのではない」「説明のつかない出来事ではなかった」と分かることは、トラウマ回復の大切な一歩です。ただし、頭で理解できても、心が回復するとは限りません。だからこそ、長い間苦しさが続いたのです。
その中で、
「このままではいけない」
「一生この状態は嫌だ」
と感じ、ご自身の力で一歩踏み出されたこと。これは本当に尊いことです。B'zを聴いて涙があふれた場面は、心が再び動き出した瞬間だったのだと思います。
熊本カウンセリングで心理療法を受け、トラウマが自然と思い出されなくなり、心の色が“温かい色”に変わってきたという表現は、まさに回復の実感そのものです。
過去を無理に忘れたわけではなく、過去が「今の自分」を支配しなくなった。これは心理療法の大きな目的でもあります。
同僚の先生の言葉を「ダメ出し」ではなく「提案」として受け取れるようになったこと、
「これでいい?」と自然に人を頼れるようになったこと。
これらは、人への基本的な信頼感が回復してきている何よりの証です。
「昔の健康な頃の自分に戻ってきた」というM.Sさんの言葉に、私は深くうなずきました。
最後に書かれていた、
「同じようなことが起きている人には、とにかく逃げてほしい」
「第三者に相談してほしい」
というメッセージは、当事者だからこそ語れる、非常に重みのある言葉です。M.Sさんがこれほどの体験を経て、今、誰かの心を守る言葉を紡いでいること自体が、回復の証でもあります。
M.Sさん、本当によくここまで耐え、そして回復の道を歩まれました。
心は壊れたのではなく、守り続けていただけです。そして今、その心は再び温かさを取り戻しています。
その歩みを、心理カウンセラーとして、心から応援しています。
この記事を書いた人
- 公認心理師。2007年に心理カウンセラー・心理セラピストとして独立し、熊本市に「熊本カウンセリング」を開設しました。以来17年以上にわたり、心理カウンセリングの実践に携わり、これまでに7,000件を超える相談実績を積み重ねてきました。2019年には拠点を熊本県八代郡氷川町に移し、地域に根ざした活動を展開しています。
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