
仕事を頑張りすぎて心身が限界に達し、休職や「適応障害」の診断を受ける人は少なくありません。今回ご紹介するI.Mさんも、強い責任感から自分を追い詰め、不眠や絶望感に苦しみました。しかし、医療・カウンセリング・休養という三本柱を通じて少しずつ回復の道を歩み、前向きな未来を描けるようになった実体験を語ってくれました。掲載の許可をいただいています。
仕事を頑張りすぎて、休職した

私は仕事を頑張りすぎて、自分を追い詰めて、うつ状態になり、休職しました。
毎日寝れなくて、ただただ毎日が苦しかったです。
睡眠時間は2時間から3時間ぐらいでした。
生きている実感がなくて、絶望感の中にいました。
営業職をしていたのですが、いろんな案件を同時進行でこなす必要がありました。
プレッシャーが大きく、残業も多かったです。残業は多い月で80時間、平均すると50時間ぐらいしていました。
私は責任感が強いので、いろんな仕事を抱え込んでいました。
失敗するとさらに責任を感じて自分自身を追い詰めていました。
「適応障害」と診断された

病院に行って診察を受けると「適応障害」と診断されました。
それから最初の4か月間ぐらいは、自力で生活リズムを整えて治そうとしていました。
しかしそれはうまくいきませんでした。
それで薬が処方されるようになりました。
その頃、心理カウンセリングも必要と考えて熊本カウンセリングを見つけて申込しました。
カウンセリングを受けて、気持ちが楽になった

カウンセリングを受けて2カ月ぐらい経ちましたが、まず寝れるようになりました。最近は6時間ぐらい寝れています。
気分の落ち込みがかなりあったのですが、それが相当減りましたね。
カウンセリングを受ける直前の頃は、気分の落ち込みの程度を10点満点で数値化すると10点でしたが、今は3点ぐらいまで下がりました。
前向きな未来のイメージを持つことができるようにもなりました。
復職して家族と一緒に幸せに過ごしているイメージです。
カウンセリングを受けてみて自分の気持ちがすごく楽になりました。
専門の人に話を聴いてもらったり過去のトラウマを解消してもらったりして、私は確実によくなりました。
家族や友達に相談するのとは違うと思います。
家族や友達は自分のことを過去から知っているので、こちらも多少は気を遣って話してしまいます。多少は無理をして言ってしまったり、アドバイスが強引だったりすることがあります。
心理カウンセラーなどの専門の人は、これまでの自分のことを全く知らなかった人なので、カウンセリングを受けていると新鮮な気づきや意見が得られます。プラスにしかならないと思います。
私が回復できた3つ理由

私はが回復してきたのは、病院で処方された薬を飲むこと、カウンセリングをうけること、休養すること(天草の海で釣り)の3つをしてきたからと思います。
もしもカウンセリングを受けなかったら、回復はもっと遅れていたはずです。
カウンセリングの中では仕事のトラウマをとったり、未来の良いイメージをもつようなことをしましたが、それはとても自分一人ではできない内容でした。
カウンセリングに行くなどの用事がない日は、朝8時前に起きて、朝食を食べて、朝日を浴びて、釣りに行っていました。
釣り場に着くのが9時か10時頃。それから夕方まで釣りをしていたり、遅いときは午後9時ごろまで釣りをしていました。
1日中釣りをする日を続けていたわけですが、おかげで好きなことを楽しめるようになりました。2カ月ぐらい前は何も楽しめなくなっていたのですが…。
また、釣り場で偶然知り合った釣り仲間ができたのがよかったですね。
共通の趣味がある人とは話も合うし、お互いの釣果情報や釣り場情報なども共有できます。
その人が船を持っていたので、「一緒に行きましょう」と船釣りにも行くようにもなりました。
休職中の人にアドバイス
私は自分が適応障害になるなんて思ってもいませんでした。
おそらく、休職している人たちはそう思っていた人が多いと思います。
私は自分と同じように苦しんでいる人たちに「無理しないでほしい」と伝えたいですね。
休職していると「苦しい」「死にたい」「どん底」と思う時期が必ずあると思います。
私自身もそうだったのですが、必ず道は開けると思います。元気になれると思います。私自身がそれを体感できました。
カウンセリングはかなり有効だと思います。ぜひ行かれるとよいです。
また運動とか栄養とか基礎から見直したほうがよいと思います。
休職した人は「無理して頑張りすぎた」「食事がわるかった」「不規則な生活をしていた」等あると思います。そういうのが少しずつ積み重なって体調不良やメンタル不調になったと思うので、振り返ってもらって、基礎から作りなおしていただけたらと思いますね。
(I.Mさん 30代男性)
心理カウンセラーからコメント

まず強調したいのは、I.Mさんが「頑張りすぎて適応障害になった」という点です。これはご本人の弱さではなく、むしろ責任感が強く真面目で、仕事に誠実に取り組んできたからこそ起きた結果です。真面目さや努力家であるがゆえに、自分を追い詰めてしまい休職に至る方はとても多いのです。ですから「自分はだめだ」「周りに迷惑をかけてしまった」と責める必要は全くありません。休職は失敗ではなく、心身を守るための自然で大切なステップなのです。
I.Mさんの経過を見ると、回復において三つの柱がありました。①医療による薬の処方、②心理カウンセリングでの支援、③趣味を通した休養と生活リズムの回復です。これは非常に理にかなった流れです。薬によって極端な不眠や気分の落ち込みが和らぎ、カウンセリングによって安心感や新しい気づきが得られる。そして自然の中で趣味を楽しむ時間が、心にエネルギーを取り戻してくれる。この三本柱がそろうことで、回復のスピードが確実に加速していきます。
心理カウンセリングが果たした役割は大きかったと言えるでしょう。カウンセリングを受ける前は気分の落ち込みを「10点」と感じていたものが、「3点」まで改善したという具体的な変化はとても貴重です。専門家に話すことによって、自分一人では気づけない思考のクセやトラウマにアプローチでき、未来に希望を描く力が少しずつ戻ってきます。家族や友人に相談することも大切ですが、どうしても気を遣ってしまったり、強いアドバイスで逆に心が疲れることもあります。その点、カウンセラーはニュートラルな立場から寄り添えるので、安心して心を委ねられるのです。
また、釣りという趣味を通じて「楽しむ力」を取り戻し、新しい仲間とも出会えたことは大きな意味を持ちます。うつ状態では「何をしても楽しくない」という感覚に陥りがちですが、少しずつでも体を動かし、人と関わり、自然の中で時間を過ごすことは、脳や心にポジティブな刺激を与えます。心理学的には「行動活性化」と呼ばれる方法で、意識的に活動量を増やしていくことで気分が改善していくことが知られています。
休職中の方へのメッセージとしてお伝えしたいのは、「今の苦しさは永遠に続くものではない」ということです。I.Mさんも語られているように、「どん底」と感じる時期があっても、そこから必ず回復の道は開けます。焦らずに、医療・心理・生活の三つの柱を意識して、自分を大切にすることが何よりの近道です。
また、休職は「立ち止まって人生を見直すチャンス」と捉えることもできます。食事や睡眠、運動といった基礎的な生活習慣を整え、過去の働き方を振り返り、「今後はどんなリズムで、どんな環境で働いていきたいのか」を考える時間にもしてほしいのです。これは再発を防ぎ、今後の人生をより豊かにする大切なステップになります。
I.Mさんの回復の物語は、多くの休職中の方に勇気を与えてくれるものです。苦しさの中でも、必ず前を向ける日が来る。そう信じて、どうかご自身を責めずに休むことを許してあげてください。そして必要であれば、ぜひ専門家のサポートを受けてください。それは弱さではなく、自分を守るための大切な力強い選択なのです。
この記事を書いた人
- 公認心理師。2007年に心理カウンセラー・心理セラピストとして独立し、熊本市に「熊本カウンセリング」を開設しました。以来17年以上にわたり、心理カウンセリングの実践に携わり、これまでに7,000件を超える相談実績を積み重ねてきました。2019年には拠点を熊本県八代郡氷川町に移し、地域に根ざした活動を展開しています。
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