妊娠中の交通事故をきっかけに、「地域の人たちから悪口を言われているのでは」と周囲の目が恐くなり、外出や買い物すら困難になった30代女性のR.Eさん。半年以上一人で抱え込んだ末に熊本カウンセリングを訪れ、トラウマ解消セラピーを受診。自分を縛っていた過剰な不安と防衛を手放したことで、人の目を見て話せるようになり、子どもへの接し方や地域の会合でも自然体で意見を言えるまでに回復した体験談です。
R.Eさんから体験談掲載の許可をいただいています。
対人恐怖の原因は交通事故をしたことだった

一番下の子がお腹の中にいるときに私が交通事故をして、そのときに地域の人たちからいろいろと悪く言われているのではないかという恐怖心が出てきました。子どもの友達の親から悪く言われるのではないかとか、そのことで子どもがいじめに遭うのではないかと不安になりました。
それで外に出ていくのが怖くなり、買い物に行くのすら嫌だったです。
人の目を見て話すことができるようになった

それでネットで検索して熊本カウンセリングのホームページを見つけていたのですが、それから半年から1年間ぐらいは何もしないまま悩み続けていました。
しかし勇気を出して申込をしました。
トラウマを解消するセラピーでは心が軽くなりました。
自然体でいいと思えるようになりました。これまで重い鎧をつけていたと思います。
頭も軽くなりました。
頭で考えすぎていたのかなと改めて思います。いい意味で、その場で考えればいいことはその場で考えればいいのだなと思えるようになりました。取り越し苦労をしなくなりました。
人の目を見て話すことができるようになりました。
いつもうつむいていたのです。
鏡で自分の顔を見ることもできるようにもなりました。これまでは自分で自分の目を見ることが出来なかったです。自分を受け入れることも出来たから、自分の目を見ることができるようになったのだと思います。
苦手な人に自分の意見を正直に話すことができた

先日子供会の会議があったのですが、これまで苦手にしていた人に対して、「私はこう思うのですよ」と正直に話すことが出来ました。これまではずっとそのような場面にならないようにいつも逃げてきていました。
今では、自然体の自分を理解してくれる人と仲良くなっていけばいいし、時の流れの中で必要とする人に対して必要なことをしていけばいいのかな、と考えられるようになりました。
子どもにも優しくなれるようになりました。接し方が変わってきました。
以前は「○○しなさい、しなさい」という感じで怒ってばかりでした。命令口調だったのですが、「○○どう思う?」と子どもに考えさせるような問いかけができるようになりました。
職場でも同僚に過剰に気を使わなくなったので、ラクになりました。
さらに不思議な事に、カウンセリングの途中から視野が明るく広くなりました。目の奥の方から白熱電灯で明るく照らすような感じになりました。
人間関係に悩んでいる人にアドバイス

私と同じように地域の人達との人間関係で悩んでいる人には、「悩んでいないで、とにかく自分のことを話してみたらいかがですか」とアドバイスしたいです。
悩んでいるときは悪循環で泥沼にはまっていくと思いますが、1つが抜けると芋づる式にスルスルスルと良くなってきます。
話すのは身近な人でいいと思います。私の場合は身近に話せる人がいなかったので熊本カウンセリングに来ました。
セラピーを受ける前には想像していなかった自分が今ここにいます。悩んでいて先が見えなかったのですが、体も心もラクになっている自分がいることが幸せだと思います。
(30代女性 R.E.さん)
心理カウンセラーからコメント

カウンセリングの現場で、うつ状態やトラウマから回復に向かうクライエントの方々からときどき耳にする言葉があります。
「急に視界が明るくなったように感じます」
「木々の緑や空の青が、鮮やかに目に飛び込んでくるようになりました」
「周りの景色がよく見えます」
こちらの体験談でも、「カウンセリングを受けてから、朝の景色が綺麗だと思うようになった」と話されています。

多くの方は「気のせいでしょうか」「気持ちが前向きになったからそう感じるのでしょうか」と不思議そうにお話しされます。しかし、これは単なる気分の高揚ではありません。客観的で確かな「身体の回復サイン」なのです。
なぜ心が軽くなると、世界が明るく鮮やかに見えるようになるのか。その背景にあるメカニズムを解説します。
狭くなっていた注意の視野が広がる

強い不安や抑うつを抱えているとき、脳は無意識のうちに「イースターブルックの仮説」として知られる知覚的狭窄(トンネル視野とも言われます)の状態に陥っています。
「イースターブルックの仮説」は、極度の緊張やトラウマ的恐怖に置かれた人間は、周辺視野や周囲の客観的な手掛かりを認識できなくなり、主観的な脅威(例えば「悪口を言われているのではないか」など)だけに認知と視野がロックされてしまう現象を説明しています。
その結果、目の前に広がっているはずの美しい景色、季節の移ろい、光と影のグラデーションといった周囲の情報(周辺的手掛かり)は、脳のフィルターによって完全に切り捨てられてしまいます。
その人が心の苦しみから解放され、過度な緊張が緩むと、狭まっていた注意の視野が外の世界へと一気に広がります。それまで見過ごしていた「葉っぱの葉脈」「木漏れ日の揺らめき」「朝の空気の澄み具合」といった豊かな細部が意識に届くようになり、世界が生き生きと立体的に感じられるようになるのです。
視野の回復は、心と身体が「安全」を取り戻した証

「景色が明るく見える」「色鮮やかに見える」――こうした視野の回復は、頭で「回復しよう」と努力して起きるものではありません。
長年張り詰めていた心と身体の警戒態勢が解かれ、自律神経系と脳が本来の健やかなセンサーを取り戻したときに、自然と内側から湧き上がってくる生理的反応です。
もし日々の生活の中で「世界が以前より明るく見える」「自然の色が鮮やかに目に映る」と感じる瞬間が訪れたなら、それはご自身の心と身体が確かな回復の道を歩んでいる証です。
Easterbrook, J. A. (1959). The effect of emotion on cue utilization and the organization of behavior. Psychological Review, 66(3), 183–201.
https://doi.org/10.1037/h0047707
