上司からの約半年間に及ぶセクハラに耐え、自分を責めてうつ状態の再発に危機感を抱いていた30代営業職のY.Sさん。利害関係のない第三者への相談を求め、熊本カウンセリングを訪問。トラウマ解消セラピーやコラージュ療法を通じ、身をえぐるようだった過去の傷を「そんなこともあったな」と客観視できるよう変化します。自己否定を乗り越え、日常の幸せと前向きな意欲を取り戻すまでの感動的な回復の記録です。
Y.Sさんから体験談掲載の許可をいただいています。
上司からのセクハラを半年間我慢していた

私はフルタイムで営業職をしているのですが、職場で直属の上司に当たる人からセクシャル・ハラスメントを受けていました。それを半年間ぐらい我慢し続けていました。
その上司は50代の男性。営業経験豊かな人で、そのご経験は尊敬できるものなので、それを教えてもらいながら、新しいプロジェクトに活かしていこうという気持ちでした。
私としては普通のビジネス・コミュニケーションをとりたくて二人で会話をしたり、仕事の後に食事に行ったりしていたのですが、それが次第に個人的な好意として誤解されるようになってしまって、次第にセクハラ的な話になり、合意なく身体に触られるということが起きました。
そこまで至って、ハッと気づいたのです。セクハラだと気づくまでに長くかかりました。
そしてそうなったのは自分にも責任があると思って、自分自身をかなり責めていました。
さらにその当時、大学時代に仲が良かった友人が突然病気で亡くなってしまうということもありました。ショックな出来事が重なりました。
うつ状態になりかけて危機感を感じた

実は私は過去に仕事でハードなことがあり、落ち込んでうつ状態になったという経験があります。そのときは朝起きられないし、どこにも行けないし、誰にも会いたくないという状態でした。
その状態はある程度回復して仕事をしていたのですが、また同じことになりそうだと危機感をもったのです。それで「これはまずいな」と思って、なにか手を打たないといけないと考えて、熊本カウンセリングのホームページを見て来ました。
そのとき最初は精神科とか心療内科を受診するべきかと迷いました。
しかしそのときは誰にもそのセクハラの悩みを相談できないという状況の中にいました。上司のセクハラを営業チームの中で誰かに相談して言ってしまったら、チームに悪影響を及ぼしてしまいそうでした。
会社の人事部に訴えればいいのですが、自分の今後のこととか、チームの若いメンバーのことを考えるとそのような直接的なことはできないと考えました。それでセクハラについては誰にも言わずに我慢していたのです。
とにかく自分の状況を話したかったのです。
それで心を開いてなんでも聞いてくれる人、しかも自分の仕事に関係のないところで、利害関係が全く無い人に相談したいと思いました
家族や友達だと心配をかけてしまうし、仕事関係者はどこから漏れるかわからないからです。
それで精神科とか心療内科などの医療機関よりもカウンセリングかなと思ったのです。
本当に「そんなこともあったな」と心から思えた

熊本カウンセリングに最初に来たときの第一印象は、清潔で明るくて、良い香りがするお部屋だなと思いました。暖かい感じの空間だなと思いました。
田中さんに対しても温かい感じの人だなと思いました。
ちょっとホッとしたのを覚えています。今思えば、当時はかなり元気がなかったのかなと思います。
毎回のセッションは自分に少しずつ変化が起きてきてどれも印象的だったのですが、トラウマを解消するセラピーと、コラージュ・セラピーがとくに印象的です。
回を重ねるごとにだんだん悲しみが少なくっていっていたのですが、本当に「過去にそんなこともあったな」と思えたのです。それまでは生々しかったし、思い出すと身をえぐられるような体験だったのですが、それが本当に「そんなこともあったな」と心から思えたのです。
自分一人で悩みを抱えていた時には否定的なことしか考えられませんでした。ずっとくよくよしながら悲しむだけでした。
しかしセラピーの中で、「悲しい出来事の中から砂金のような何か自分のためになるものを取り出して、キラキラ光る砂金だけをとりだして前を向いていこう」というような比喩のような言葉をかけられたのですが、本当にそういう気持ちになれたのです。
もともと私は言葉に影響されやすい性質なのですが、本当にずっしり重い砂金の袋を授かったような気持ちになって帰りました。そのときから悲しみと幸せの分量が入れ替わって、自分を肯定できるようになりました。
コラージュ・セラピーでは、自分の過去、現在、未来を楽しみながら考えることができて、自分の人生を肯定できました。
自分の過去にも楽しいことをたくさん発見することができました。それまでは悲しみだらけと思っていた過去のはずなのですが…。
コラージュの作業そのものも楽しかったです。
はじめてカウンセリングを受けた当初は、先のことなんて考えられないし、不安で不安で仕方がなくて、悲しくて悲しくて仕方がなくて、という状態だったのですが、これから何が起こるのだろうとワクワクする気持ちを持つことができました。
大切なことに気づいた

私自身について気づいたことは、まずもともと生きることが好きで、愛されて育ってきたということです。そして自分を傷めつける必要は何一つなかったのに、かなり無理をしていたことに気づきました。
仕事をきちんとしないといけないと考えすぎていましたが、「自分の健康を損ねてまでする仕事はない」「自分が一番大切」ということが分かりました。
自分を楽しくさせること、それは私の場合は日常の中で写真を撮ったり、散歩をしたりすることなのですが、そういうことが大切なんだなと気づきました。
悲しみに塞いでいる人は、日常の中に存在している楽しみとか喜びを失ってしまう。どんなに綺麗な景色を見ても、どんなに安心するような場所にいても、悲しいときはそれらが全く見えていない。私自身がそうだったと思います。
カウンセリングを受けてからは、本当にちょっとしたことなのですが、朝の景色が綺麗だとか、季節の変わり目を感じたりとか、食べ物が美味しくなったり、過去に美味しいものを食べた思い出も蘇ってきたりするようになりました。
今までと変わりのない毎日なのですが、うれしいな、楽しいなと思えることが増えました。
日常の幸せを感じられることが健康なのだなと思いました。
働きやすい職場をつくりたい

会社の中には、言葉にならないところで苦しんでいる、本来の仕事に打ち込めないでいる人が結構いらっしゃるのではないかと思います。
また自分が生きてきた時代とか経験の中で意図的ではないにしろ周囲を傷つけている人も確実にいると思います。
そこにギャップがある。それを何らかの形で見えるようにして、働きやすくする。そんな仕事をしたいなという気持ちが出てきました。それは数字とか実績にはなりにくい仕事で、売上の数字にも勿論なりませんし、会社にとってはコストになると思いますが…。
自分の会社に企画書を書いてみたい気持ちになりました。
こんなことに関心が持てるようになったのもカウンセリングを受けて良かったことのひとつです。
セクハラに悩んでいる人にアドバイス
私と同じようにセクハラで悩んでいる人には、「我慢しなくていいよ」とアドバイスしてあげたいです。「よくあること」と思って我慢することがかなり多いと思うのです。「受け流すこと」が働く女性のマナーみたいになっているところがあると思います。
しかし我慢するなら、その分だけ自分を大切にする時間をとってから、そしてまた立ち向かっていったほうがいいです。「あなたは全然悪くない」と言ってあげたいです。全く悪くないし、自分を責めないでのびのびと仕事をする環境が整えばいいなと思います。我慢しないで自分の行きたい道を歩いていって欲しいと思います。
(30代女性 Y.Sさん)
心理カウンセラーからコメント

上司からのハラスメントと大切なご友人の訃報という重いストレスが重なる中、Y.Sさんは一人で苦しみを抱え込み「自分にも責任があったのではないか」と自分を責めておられました。再度の抑うつ状態に対する強い危機感から勇気を出してカウンセリングの扉を叩き、身をえぐるようなトラウマ体験を「そんなこともあったな」と心から思えるまで解消されました。
それだけにとどまらず、Y.Sさんには「心的外傷後成長」が起きました。
この「心的外傷後成長」について解説いたします。
心的外傷後成長 … 逆境を乗り越えて新たな価値観や意欲を獲得する
心的外傷後成長(Posttraumatic Growth: PTG)とは、Tedeschi, R. G., & Calhoun, L. G. (1996)らが確立した概念です。
事故、病気、ハラスメント、喪失、災害などの深刻なトラウマや危機的体験(人生の前提を揺るがす出来事)を乗り越えるプロセスにおいて、個人に生じる「肯定的変化」や「精神的変容」です。
心的外傷後成長では例えば下記のような変容が起きます。
- 他者への共感や思いやりが増す
- これまで関心がなかった分野や活動に目が向く
- 「これまでの生き方」を見直し、新しい人生の目的や目標(例:人の役に立つ仕事、新しい趣味など)を定める
- 「あの苦しい状況を乗り越えられたのだから、自分は想像以上に強い」という自己効力感が生まれる
- 人生の不確実性を受け入れ、物事をありのままに捉えられるようになる
- 毎日の当たり前の生活、季節の移ろい、朝の空気、美味しい食事などに深い喜びや感謝を感じる(健康的感受性の回復)
- 人生の優先順位が変わり、本質的なもの(家族、健康、心の平穏)を最優先するようになる
Y.Sさんには「朝の景色や食べ物の美味しさに感謝できるようになった」「職場環境を改善する企画書を書きたい」という変化が起きました。
心的外傷後成長は、トラウマ体験によって直接生じるわけではありません。「トラウマによって壊れた認知(世界観)を、自らどのように捉え直したか(思考の再構造化)」のプロセスを経て生じます。
このプロセスを作り出したのが、無意識に働きかける催眠療法的な言葉かけ「悲しい出来事の中から砂金のような何か自分のためになるものを取り出して、キラキラ光る砂金だけをとりだして前を向いていこう」(実際に私が言った言葉はこれと全く同じではないですが、大意は同じです)と、コラージュ療法でした。
Tedeschi, R. G., & Calhoun, L. G. (1996). The Posttraumatic Growth Inventory: Measuring the positive legacy of trauma. Journal of Traumatic Stress, 9(3), 455–471.
https://doi.org/10.1007/BF02103658

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